神の鑿(のみ) 寅吉・和平の世界

寅吉・和平の世界5

八槻都都古和気神社

 奥州一の宮と呼ばれる神社が3社ある。
 ひとつは和平の昭和5年建立の奔放な狛犬が参道を守る石都都古別神社。あと2つは、棚倉町の馬場と八槻にある都都古和気神社だ。
 両都都古和気神社は、どちらも「奥州一の宮」を名乗っている。
 和平の狛犬くらい大きなものを奉納できる神社は、そんなに小さくはないだろう。となれば、この両都都古和気神社はチェックしておかなければならない。
 2003年秋、和平の3番目の狛犬に出逢えることに期待しながら、また南福島の地を訪れた。

 最初に訪れた馬場の都都古和気神社には狛犬がいなかった。
 八槻都都古和気神社にもいないだろうと、あまり期待せずに訪れたところ、期待以上の狛犬に出逢えた。

八槻都都古和気神社

八槻都都古和気神社 全景
八槻都都古和気神社 吽 八槻都都古和気神社 阿
 近づいてみてびっくり。
 これは古そうだし、しかもユニーク。
阿
 特にこの阿はすごい顔だ。インドネシアというかなんというか。
 目の部分は後から墨で修正されているようだが、恐らく建立直後もこんな顔だったのだろう。
 阿吽でかなり顔が違うのが特徴。


吽の顔 阿の顔
 
 阿は耳が立ち、歯や舌まで克明に刻まれている。
 吽は耳が小さく寝ていて、逆に鼻は大きい。
 阿吽を同じ石工が彫ったとしたら、これだけ彫り分けるのは大変な才能だ。
 吽の顔は、石川町の石都都古別神社の傑作狛犬を彫った小林和平の作風にも通じるところがある。
 恐らく、和平は同じ「つつこわけ」神社であり、奥州一の宮を称しているこの八槻都都古和気神社を訪れ、この狛犬に相当影響を受けたはず。和平狛犬のルーツを見つけた気がした。
吽の顔

 しかし、天保年間の狛犬が、よくぞここまできれいに残っていてくれたものだ。感激。
年号
 台座の文字も実に鮮明に残っている。
 両方の台座の周囲には、奉納した人たちの名前がびっしり刻まれていて、近隣の村もすべて巻き込んでの大奉納だったことが分かる。
 名前は姓がないものが多く、豪農や商家だけでなく一般の農民たちも参加しての大イベントだったのだろう。
 金百疋とか銀二朱といった金額も、一体どのくらいのものなのか、私には知識がないので見当がつかないが、きっと大金だったのだろう。
 しかし、これだけ台座に人名がびっしり刻まれているのに、どこを探しても石工の名前がない。残念だ。
台座

吽の背中阿の背中
 背中側から見たところ。右側が阿。巻き毛のデザインも違っていることが分かる。
吽横から
 吽には子獅子がじゃれついているが、これがまたいい。
 江戸期の狛犬で、子獅子がこれだけ表情のあるものは少ないだろう。
吽の子 子獅子の顔
 石都都古別神社の小林和平の狛犬には、子獅子が3匹もくっついていて、それぞれやんちゃな素振りを見せていたが、和平が子獅子にも手を抜かなかったのは、この狛犬に負けないものを造るという気持ちからだったのかもしれない、などとこのときは思った。
■Data:八槻都都古和気神社(福島県東白川郡棚倉町八槻):
ο建立年月・天保11(1840)年11月。ο石工・不明。ο奉納者・多数。ο世話人・流村新蔵 他。

ο撮影年月日・03年2月4日。
 この後、2003年6月12日には、母親にせがまれ、石都都古別神社、八槻都都古和気神社、古殿八幡神社の3社を再訪する羽目になった。
 これでもうしばらくは足が遠のくだろうと思っていたところ、2004年に新たな展開があった。

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