弘前市周辺の狛犬(5)

弘前八幡宮(弘前市八幡町)

 前回は、弘前八幡宮で2対の気になる狛犬を見つけました。ひとつは境内に続く参道(と言っても今は一般の自動車道路)の両脇にいる「犬顔の狛犬」。山内三次郎という名工が彫った傑作。
 もうひとつは、八幡宮の宮司さんに特別に見せていただいた江戸初期の笏谷石狛犬。この2対は、ぜひ今回も撮影しておきたいと思っていました。まずは犬顔狛犬に会いに。
弘前八幡犬顔吽 弘前八幡犬顔阿
これが「犬顔の狛犬」です。前回は日没前で、強烈な逆光でうまく撮影できませんでした。特に「吽」のほうはまともな写真が撮れなかったので、今回はしっかり撮らねば。しかし、メモリが……。うううう。
 本当なら何枚も押さえておきたいんですが、メモリが残り35枚なので、泣く泣く1枚ずつにしました。
 しかし、「阿」のほうも、口をほとんど閉じていますねえ。
■Data:弘前八幡宮の前の道(青森県弘前市田町三丁目=吽と四丁目=阿):
ο建立年月・明治32(1899)年8月15日。ο石工・山内三次郎。
ο撮影年月日・01年9月22日。


 さて、いよいよ弘前八幡宮奥宮にいる笏谷石狛犬です。これは宮司さんに頼んで、奥に入れてもらわないとご対面できません。
 社務所に直行したのですが、あいにく、前回、向こうから声をかけてきてくださった気さくな宮司さんは不在らしく、若い無口な宮司さんが応対しました。
 「奥にいる江戸時代の狛犬を撮影したいんですが……」とお願いすると、しばし無言で考え込んでいる様子。しかし、一応案内してくれました。
弘前八幡寛文四年狛犬吽弘前八幡寛文四年狛犬阿

これですこれです。ほぼ間違いなく笏谷石の狛犬。「ここからなら」と、作の手前からの撮影のみ許可されました。よく見ると肩から前脚にかけて何か文字が刻まれています。ここに年号があるんではないでしょうか。間近に確かめたいのをぐっとこらえて、また、メモリを気にしつつ、撮影。
 無口な若い宮司さんに、この狛犬がいかにすごいかということを熱っぽく説明したんですが、あまり反応なし。「好きな人がいるんですねえ」と苦笑。
 その後、キツネの「安置所」で三次郎作かもしれないキツネ↓を撮影していると、宮司さん、何も言わずにすっと消えてしまいました。
 
弘前八幡のキツネ
 雨が結構強く降ってきて、仕方なく、そのまま車に戻ったところ、さっきの宮司さんが紙を持って追いかけてきました。
 弘前市が数年前に作成した文化財の資料か何かのコピーを取ってきてくれたのでした。無口で一見愛想がないように見えても、やはり東北の人は親切ですね。前の青森旅行のときも、途中で車のマフラーがちぎれて、田舎町の修理工場に飛び込んだんですが、やはり無口な工員さんが黙々と修理してくれ、とても助かりました。
 この資料にはこうあります。

 当市弘前八幡宮、熊野奥照神社、目屋桜庭多賀神社(旧清水の観音堂)には市指定の石造狛犬が各一対ずつある。これら三体は石質、大きさ、形状共に酷似し、刻銘は八幡宮が「斎藤平左衛門」、熊野奥照神社が「金吉安」、多賀神社が「奈良岡権右衛門」と奉納者が異なっている外は、年紀は同じ「寛文四年」であり、それらの書体まで酷似している。三名の奉納者は当家中の武士と推定される。
 六基の狛犬は同一工房に於いて造られたものと認め得ようが、その石材は当地方では産しない。恐らくは越前・越後方面より完成品として北前船によって海上輸送されて来たものであろう。
 現在、日本海岸沿いの由緒ある社寺に北前船の船主や船頭達が奉納した小形ではあるが石造狛犬を発見しうることからも推論できよう。
 それ故に江戸時代の海上を主要とした交易の解明に貴重な資料となっている。なお、三対とも像高約60cm、像長55cm程度のものである。

 
 前回、宮司さんは「慶長年間」と言っていましたが、この資料によれば「寛文四年」ではないですか。1664年。慶長は1596年からなので、半世紀ほど新しいわけですが、年号が特定できたのならそれはそれで大収穫です。
 若い宮司さんの説明によれば、熊野奥照神社はすぐそこだとのこと。しかし、この宮司さんも、奥照神社の狛犬は見たことがないそうです。
 これは行くっきゃない。次へGo!
■Data:弘前八幡宮(青森県弘前市八幡町):
ο建立年月・寛文4(1664)年。ο奉納者・斎藤平左衛門(資料による)。
ο撮影年月日・01年9月22日。
 


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