狛犬の写真を撮るカメラを選ぶ場合、目的によって大きく2つに分かれます。
- なるべく手軽に撮りたい。記録なので、きれいにくっきり写っていればいい
- 背景をぼかしたかっこいい写真を撮りたい
1)の目的であれば、
レンズの明るいコンパクトカメラです。
2)はコンパクトカメラでは無理です。
上の写真Aは1997年に撮ったもので、当時はまだデジカメが使いものにならなかった時代です。これはニコンのいちばん安い一眼レフ(マニュアルフォーカス)にF1.8/85ミリ という明るい単焦点レンズをつけて撮影しました。カメラ本体よりもレンズのほうが高かったです。
その下の写真Bはデジタル一眼レフがようやく10万円くらいまで値が下がってきたとき、ニコンの初期のモデルD70に写真Aと同じ85mm/F1.8のニッコールレンズをつけて撮っています。背景をぼかしたいために、どちらも絞りは開放にしています。
コンパクトデジカメではこういう写真は撮れません。背景までくっきりピントが合ってしまいます。
コンパクトデジカメはフィルムに相当する撮像素子(今はほとんどがCMOSという電子部品)が小さいため、レンズの焦点距離が短くなり、ピントが合う範囲(被写界深度)が深くなるためです。
これはカメラマンの腕では解決できない問題で、どうしようもありません。
上の写真はパナソニックのLX5というコンパクトデジカメで撮っています。
LX5は1/1.63型という撮像素子を持っていて、これは当時のコンパクトデジカメとしてはかなり大きなサイズです。レンズの開放F値は2.0で、これもコンパクトデジカメではかなり明るいものです。
それでもレンズのF値を2.0と明るく開いているにもかかわらず、背景がくっきり写ってしまっています。
コンパクトデジカメではこれが限界だということです。
こういう写真でもいいか、それとも背景をぼかした写真を撮りたいか、というのが最初に決めなければならない問題です。
背景をぼかした写真を撮るためには、撮像素子が大きい必要があります。
レンズ交換式カメラでも、安価なものはAPS-Cという、35mmフィルムカメラ時代の約半分の大きさしかありません。35mmフィルム1コマと同じ面積の撮像素子を持つカメラは「フルサイズ」モデルといって、カメラもレンズも非常に高価です。
オリンパスやパナソニックが採用しているフォーサーズという規格はさらに小さくなりますので背景をぼかすには不利です。
また、快晴の日でも神社の境内は暗いことが多いので、明るいレンズは必須です。フルサイズモデル用の明るいレンズというのは大きく、重く、また高価でもありますので、お金も根性も必要です。
さらには、ズームレンズはレンズのF値が暗くなるので、明るいレンズというとどうしても単焦点レンズになります。単焦点レンズは画角を変えられませんので、構図が限られてきます。狛犬の位置によっては後ろに下がれなかったりしますから、全体像が収まらないということもあります。
そうした困難さを承知の上で、背景をぼかした写真優先でカメラとレンズを選ぶなら、
- 撮像素子が大きい(APS-Cサイズ以上の)カメラ
- 使うレンズのF値が小さい(明るい)こと(F2.0以下が目安。最低でもF2.8)
が絶対条件となります。
望遠レンズ(焦点距離が長い)のほうが背景はぼけやすいですが、場所によっては狛犬全体が収まらないことがあるため、単焦点レンズを使うなら、最低でも2本は持ち歩かないといけないでしょう。
私は一時期、30mm/F1.4 と 50mm/F1.8 の2本を持ち歩いていました。
次のページでは、さらに具体的にカメラ選びについて解説します。