鹿沼狛犬街道(6)

いよいよ終点の古峰神社です。
この先、道は足尾まで続いているのですが、ここ数年、拡幅工事のため通行止めとか。
ずいぶん前にここを訪れたときもそうだったような気がします。いや、そのときは「道はあるけれど、狭いし荒れているからやめておいたほうがいいよ」と茶店の主に言われたのだったかな。
今回は足尾まで抜けるつもりできていたので、がっくり。

古峰神社

古峰神社には全部で5対の狛犬がいます。入り口に近いほうから順に、大正14年、昭和45年、昭和7年、江戸(年代読みとれず)、年代不明。
古峰神社1吽  古峰神社1吽
これが入り口すぐにいる狛犬。かなり大きなものです。
我が家の狛犬アルバムにも残っているんですが、再訪しても、ああ、こんなんだっけかな、という程度の印象。
よくできてはいるんですが、なんか感動はないですね。大正14年建立。

次は昭和45年建立の典型的な岡崎型。「しょーわ」と呼んでいるタイプ。
石工は篠原鉄三郎で、先ほど見た護国神社の狛犬と同じ人ですね。
この石工さんは鹿沼周辺にたくさんの狛犬を彫っているようですが、どれもこれもこのタイプで、まあ、芸術家肌ではなく職人さんなんでしょう。
2対目の阿
3対目はいかつい江戸タイプ。戦前の江戸タイプはこのように凶悪な顔をして威嚇する姿勢のものが多いですね。吽は構えていて、構図としては獅子山です。
古峰神社3の吽  古峰神社3の阿

で、この3対目には、そこまでしなくとも……と思うほどくっきりはっきりと股間のシンボルが刻まれています。
吽のナニ
↑吽のほう。どうもこれはω←たまたまではなく、♀の陰部らしいですね。


古峰神社3の阿の逸物
↑これが阿のほうの股間。ω←たまたまの向こうにしっかり竿が刻まれています。

4対目は古峰園(神社併設の庭園)入り口にあります。
これだけが江戸時代のもの。相当大きく立派な狛犬です。当時としては大変な力作と言えます。
やまびんさんによれば、寛政11(1799)年ということですが、僕は台座の文字が読めませんでした。
やまびんさんが見たときからさらに摩耗が進んでいるんでしょう。年号がかすれているときは、早い時期に読みとって記録しておかないと駄目ですね。
古峰神社4の吽  古峰神社4の阿

ご覧のように、吽のほうは苔がすごいですね。前にきたときはこんなじゃなかったと思うんですが。
古峰神社4吽の顔  古峰神社4阿の顔

この狛犬、台座表の年号はほとんど判読不可能になっていますが、裏側には石工の名前がまだ読める状態で残っています。

阿:武?江戸浅草田原町石工新助弟子仕?熊吉
吽:武?江戸下谷坂本?町一丁目棟梁長八

長八と熊吉の二人が刻んだんですね。力感といい、細かなところまでの彫り込みといい、間違いなく江戸獅子宝珠型の名作と言えるでしょう。
古峰神社4
後ろ姿も素晴らしい。このどっしりと直立した尾の、何とも言えない存在感と安定感。
で、注目したいのはこの宝珠型、阿像に宝珠、吽像に角である点です。諸職画鑑の影響で、江戸時代の一時期、吽像に宝珠をつけてしまう「間違い宝珠型」がたくさん作られました。江戸ではある時期からそれが間違いだと気づいて消えていくのですが、地方ではその後もずっと間違い宝珠型が続いていました。
この宝珠型はさすが江戸の名工が彫っただけあって、宝珠を吽像にはつけていません。栃木県内ではこれ以後の年代の宝珠型もほとんどが間違い宝珠型なのです。

5対目は本殿前の岡崎型。大きいだけで特にどうということもないので省略。
ただ、本殿の彫刻などは一見の価値があります。
本殿
↑これが本殿で、
本殿
↑細密な彫刻が刻まれています。
亀
↑この亀はとても小さくて見逃しそうですが、
亀
↑よく見ると、こんなに精悍な顔つきで彫られています。
鳳凰
↑同じように、鳳凰の彫刻もすごく小さいんですが、望遠レンズを通して見ると、こんなにきちんと刻まれています。技術もさることながら、すごい根気ですね。
■Data:古峰神社(栃木県鹿沼市草久):
1: ο建立年月・大正14(1925)年。
2: ο建立年月・昭和45年5月。ο石工・篠原鉄三郎。
3: ο建立年月・昭和7(1932)年7月7日。ο奉納・神力講
4: ο建立年月・寛政11(1799)年(山田敏春さん調査)。ο石工・長八&熊吉。
5: ο建立年月・不明。かなり新しい。
ο撮影年月日・02年10月25日。
この後、仕方なく一旦戻って、粟野町方面を探索しました。十数社訪ねて数社に狛犬を見つけましたが、どれも昭和のもので、とりたててご紹介するほどのものではありませんでした。
やはり、県道14号は「狛犬街道」と呼ぶべきルートですね。




▲北関東の狛犬目次TOPへ


HOMEへ 狛犬ネット入口目次へ



狛犬ネット売店へ
狛犬ネット売店

『神の鑿』『狛犬ガイドブック』『日本狛犬図鑑』など、狛犬の本は狛犬ネット売店で⇒こちらです



『狛犬かがみ』はAmazonで購入できます