狛犬の愛し方

 狛犬の愛し方は人それぞれですし、もちろん、いろいろな愛し方があっていいと思います。
 狛犬分類学のようなものは、最近になってあちこちで試みられているようですが、私はもっと単純に、というより、初心に戻って、「狛犬の愛し方」を説きたいのです。
 そもそも、狛犬に魅せられたきっかけはなんだったのか? 初めて狛犬の魅力に気づいたとき、年代別に統計を取ろうとか、形で分類しようなどという考え方はありませんでした。もっと根源的な感動に包まれたのです。その根源的感動はどこから生まれたものなのでしょうか?

 文化財としての狛犬や、文化史としての狛犬は他の人に任せ、私は狛犬というものが持つ分析不能の魅力について、多くの実例をご紹介しながら語っていきたいと思います。
 

アートとしての狛犬

 もう一つ、私が掲げたいのは、「アートとしての狛犬」という側面です。古いから価値があるという見方ではなく、新しくても、アートとしての価値、あるいは「魂のある」狛犬を生み出す職人の心意気を感じさせる狛犬は「よい狛犬」だと思うのです。
春日神社のクッキーモンスター狛犬千葉県西船橋・春日神社の狛犬。昭和の作品ですが、新しいからどうのではなく、実に「アート」していますね。「命」が宿っている狛犬。「生きている」狛犬。狛犬が生きているかどうかは、作られた時代や技の巧拙には関係ありません。うまくても、「こんなもんだろ」という感じで造られた狛犬は命が入りません。
 右は、福島県の古殿町にある八幡神社の狛犬です。これも昭和初期の作品ですが、デザインといい規模といい技術といい、それまでの狛犬文化の集大成のような逸品です。こうした狛犬が、もっともっと見直されてもいいと思うのです。古殿八幡宮


 私が言う「アート」というのは、必ずしも美術品として優れているということでもありません。石工が本気で彫った狛犬は、たとえ技術的にヘタであっても、魂が吹き込まれることがあります。こうした狛犬に出逢うことを無上の楽しみとできるようになれば、もう、狛犬の愛し方をどうこう言うことはないですね。


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