狛犬分類研究(3) 出雲
「出雲」という分類名称は、円丈師匠や小寺慶昭さんなども使っているので、問題なく定着していく名称だと思います。
出雲は、腰を上げて今にも飛びかかろうというポーズの「構え獅子」型(crouching style)と、普通に蹲踞しているお座り型(sitting style)に大別されます。
人によっては前者を「出雲」、後者を「丹後」などと呼んでいますが、顔の特徴が同じであり、使われている石が来待(きまち)石といって砂岩系の脆い石であること、北前船で日本海沿岸に広く運ばれ、建立されていることなど、ポーズ以外は共通点が多いので、ここではひとまとめに「出雲」としてくくり、ポーズの違いを明確にして限定する場合、前者を「出雲構え獅子」、後者を「出雲丹後」と呼ぶことにします。
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↑新潟県村上市岩船神社の狛犬 | ↑新潟市白山神社の狛犬 |
顔の特徴
1)目が釣り上がっており、空豆型。光彩はないものがほとんど。
2)耳は垂れ耳。
3)眉は太く釣り上がり、唇の上から耳の付け根にかけて襞が何本か刻まれている。
4)鼻は獅子鼻で大きい。
5)短めの顎髭があり、真ん中で分かれている。
からだの特徴
1)たてがみ以外は体毛をあまり刻まない。その代わり瘤を強調したものは多い。
2)前脚は太くてまっすぐ。足の指や爪も太く、がっしりした感じ。
3)尾はいくつかのバリエーションがあるものの、巻き毛直立型。
出雲狛犬と来待石
来待石とは、島根県宍道町来待地区に算出する石で、1400万年前に形成された凝灰質砂岩のこと。
この細工しやすい石は古くから灯籠や狛犬などの石造物の材料として重宝されましたが、凝灰質砂岩なので脆いのが難点。出雲狛犬は風化が早く、今日では完全な姿を見られるもののほうが少ないくらいです。
現在では地場産業として「来待石灯籠」を振興させているようですが、「来待灯籠の寿命は人の寿命と同じくらい」と言う石工さんもいます。
出雲狛犬の分布
来待石(出雲石)で作られているため出雲型と呼ばれていますが、江戸時代から北前船にのって北海道から九州まで、広く日本海側に運ばれたため、「出雲地方の狛犬」というよりは、「日本海沿岸を代表する狛犬」と言ったほうがいいでしょう。
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