苔むしトルソー狛犬

 参道狛犬(表に出ている狛犬。これに対して建物の中に収蔵されている移動可能の狛犬を「神殿狛犬」という)は日々風雨に耐えているわけで、当然月日と共に表面は削られ、苔むしていきます。実は、私はこの「苔むし」や「風化」した狛犬にとりわけ愛着を感じます。風化が進み、元の表情を失って別の立体造形になっているような狛犬を特に「トルソー狛犬」と命名したいと思います。この手のものはもちろん文化財的な価値はひたすらゼロに近いわけですが、逆に別の味わいが出てきて、なんとも言えぬ風格や迫力が加わっているものも少なくありません。
 そんな渋い狛犬たちを集めてみました。中には現役を引退した「先代」と呼ばれる狛犬たちもまじっています。

↑これは「トルソー」狛犬に興味を持つきっかけとなった狛犬。場所は新潟県岩船郡朝日村の北端。国道7号線で山北町との境界を越えるあたりに朝日トンネルというトンネルがあるんですが、そのトンネルが開通する前の旧道(山越えの道)にわざと入ってみたところ、明神岩というところに漆山神社という廃社に近い社があり、そこにこの狛犬がいました。
 1対の内恐らく「ん」のほうはほとんど原形をとどめておらず、ただの石の固まりになっていました。「あ」のほう(だと思う)だけがかろうじて狛犬だと分かる形で残っていました。
 その場の静謐さは私に強烈な印象を残しました。誰も来なくなった山奥の社を守る狛犬。生きているうちにもう一度訪ねてみたいと思っています。
■Data:漆山神社、新潟県岩船郡朝日村、撮影年1986年


↑栃木県岩船山の山頂に放置されている狛犬。少し下には高勝寺という地蔵菩薩を祭るお寺があり(しかし、その昔は天狗系だったような感じもする)、すぐ横は採石場で大きく山をえぐられているというきわどい場所です。
 訪ねる人もいない吹きっさらしの山頂には、今では小さな社が形ばかり置かれているだけ。野原の真ん中にこの狛犬はいる。ここも相方の狛犬は風化してしまい、土台しか残っていません。
 ここは拙著『天狗の棲む地』の舞台になった場所でもあります。
 こちらに詳しい情報があります。


↑これぞ究極のトルソー狛犬。よくぞここまで清く美しく風化したものだと感心せざるをえない、神々しいまでのトルソーぶり。
■Data:十二社(新潟県五泉市)、撮影年月日・97/5/23


 ←島根県・佐太神社の小さいほうの狛犬。ここは大きいほうの狛犬もなかなかの佳作。
 ヤツデの葉っぱに隠れるようになりながらも頑張っていました。


←山梨県・甲斐駒ヶ岳神社の狛犬。
とりたててどうということのない畿内型狛犬ですが、よくある光景の一つとして、一応、入れておきました。

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